アマチュア衛星通信の魅力と可能性
アマチュア衛星通信は、地上の中継局(レピーター)が宇宙を飛んでいるようなものであり、普段の地上波による無線交信とは異なる独特の体験ができます 。自分の発射した電波が、はるか上空の人工衛星を経由し、遠く離れた地域、あるいは海外のアマチュア無線家と繋がるという事実は、何物にも代えがたい感動を与えてくれます。また、衛星からの信号がドップラー効果によって変化したり、自分の声がエコーのように少し遅れて聞こえたりする現象は、衛星通信特有の「不思議な魅力」と言えるでしょう 。
このアマチュア衛星通信の世界は、一部の専門家だけのものではありません。アマチュア無線技士の免許を持つ人であれば、誰でもその扉を開くことができます。このレポートでは、アマチュア無線家が人工衛星を利用して無線通信を楽しむための具体的な方法をいくつか選び、それぞれの魅力、必要な機材、運用方法などを詳しく解説します。比較的取り組みやすいFM衛星による音声交信から、より高度な技術を要するSSB/CWでの本格的なDX通信、さらにはAPRSを利用したデータ通信まで、あなたの宇宙への無線通信の楽しみ方を広げるお手伝いをします。
アマチュア衛星通信の基礎知識
アマチュア衛星とは?
アマチュア衛星とは、その名の通り、アマチュア無線家のために打ち上げられた人工衛星のことです。これらの衛星は、政府機関や商業的な衛星企業が運用するものとは異なり、個人的な趣味の団体や大学の研究室などが主体となって製作・運用しています 。アマチュア衛星の歴史は古く、宇宙開発の黎明期である1961年に打ち上げられたOSCAR-1(オスカー1号)がその始まりです 。以来、現在までに数多くのアマチュア衛星が打ち上げられてきました。「OSCAR」という名称は「Orbiting Satellite Carrying Amateur Radio(アマチュア無線を搭載した周回衛星)」の頭文字を取ったもので、アマチュア衛星の象徴的な名前として受け継がれています 。
これらの衛星は、搭載する中継器の種類や運用目的によって、FMリピータ衛星、リニアトランスポンダ衛星、デジタル通信衛星などに分類されます。軌道は、地球の比較的低い高度(数百kmから千数百km)を周回する低軌道衛星(LEO: Low Earth Orbit)が主で、これらの衛星は概ね90分から120分程度で地球を一周します 。
アマチュア衛星の世界は非常に多様性に富んでおり、長い歴史を持っています。OSCAR-1の打ち上げから半世紀以上が経過した現在でも、AMSAT(アムサット:Radio Amateur Satellite Corporation)やJAMSAT(ジャムサット:日本アマチュア衛星通信協会)といった国際的な組織から、各国の大学の研究プロジェクト(例えば、日本のNEXUS衛星プロジェクト )に至るまで、様々な団体が衛星の開発と運用に携わっています 。これにより、1970年代に打ち上げられたAO-7のような古い衛星が部分的にでも運用を続けている一方で 、最新技術を投入したCubeSat(キューブサット)と呼ばれる超小型衛星も次々と登場しています。これは、アマチュア衛星が固定的なリソースではなく、常に進化し続けるダイナミックなエコシステムであることを意味しており、ユーザーは多様なレベルでこの趣味に関わり続けることができます。
主な通信モードの概要
アマチュア衛星通信で利用される主な通信モードには、以下のようなものがあります。
- FM (Frequency Modulation): 主に音声通信に用いられ、比較的簡単な設備で運用を開始できます。FMモードは音質が良く、周波数のズレにもある程度強いため、衛星通信の入門に適しているとされています 。現在市販されている多くのハンディ型トランシーバーでも対応可能です。
- SSB/CW (Single Sideband / Continuous Wave): FMモードに比べて、より遠距離の通信(DX通信)に向いており、微弱な信号でも聞き取れる可能性があります。一方で、FMモードよりも周波数管理がシビアであり、後述するドップラー効果への精密な対応が求められます。CW(電信)は、SSBよりもさらに微弱な信号での交信が期待できます。
- デジタルモード (Digital Modes): 音声以外のデータをやり取りする通信モードです。代表的なものに、パケット通信を利用したAPRS(Automatic Packet Reporting System)があり、位置情報や短いメッセージの交換などに利用されます 。その他、衛星からのテレメトリデータ(衛星の状態に関する情報)の受信や、SSTV(低速走査テレビジョン)による画像の送受信なども行われます 。これらのデジタル通信では、AX.25という通信プロトコルが広く用いられています 。
衛星通信に必要なアマチュア無線資格と利用可能な周波数帯
日本においてアマチュア衛星通信を行うためには、アマチュア無線技士の資格が必要です。しかし、特別な上級資格が必須というわけではなく、例えば第四級アマチュア無線技士の資格でも、衛星通信に利用できる周波数帯の操作が許可されています 。これは、アマチュア衛星通信への参加のハードルが比較的低いことを意味しており、初心者や若年層のハムでも宇宙との交信に挑戦しやすい環境にあると言えます。
アマチュア衛星通信で主に使用される周波数帯は、VHF帯(144MHz帯)とUHF帯(430MHz帯)です。多くの衛星では、アップリンク(地上局から衛星への送信)とダウンリンク(衛星から地上局への受信)で異なる周波数帯を使用します 。例えば、144MHz帯で送信し430MHz帯で受信する、あるいはその逆の組み合わせ(クロスバンド運用)が一般的です。もちろん、自身が保有するアマチュア無線技士の資格によって操作できる周波数帯や空中線電力(送信出力)に制限があるため、その範囲内で運用することが必須です 。
衛星通信特有の現象:ドップラー効果とその対策の重要性
人工衛星は地球の周りを非常に高速で移動しているため、地上局との間で送受信される電波の周波数が変化して聞こえる「ドップラー効果」という現象が発生します 。具体的には、衛星がこちらに近づいてくる時には受信周波数が高く聞こえ、遠ざかっていく時には低く聞こえます。この周波数のズレは、特にUHF帯以上の高い周波数で顕著になります 。
FMモードの場合、受信機がある程度の周波数ズレを許容できるため、影響は比較的小さいですが、それでも最適な受信のためには周波数の微調整が推奨されます。しかし、SSBやCWといった帯域幅の狭いモードでは、このドップラー効果による周波数変化に正確に対応(周波数をリアルタイムで補正)しなければ、明瞭な通信はほぼ不可能です 。したがって、ドップラー効果を理解し、適切に補正する技術は、アマチュア衛星通信を行う上で基本的ながら非常に重要なスキルとなります。特にSSB/CWモードでの交信を目指す場合は、この技術の習得が成功の鍵を握ると言えるでしょう。
方法1:FM衛星による手軽な音声交信
FM衛星(FMリピータ衛星)の仕組みと特徴
FM衛星は、しばしば「宇宙を飛ぶFMレピータ」と形容されるように、地上のアマチュア無線用FMレピータ(中継局)と同様の機能を持っています 。具体的には、地球上のアマチュア無線局から特定のアップリンク周波数で送信されたFM音声信号を衛星上で受信し、それを別のダウンリンク周波数で増幅して再送信することで、より広範囲の局との交信を可能にします。
このFM衛星の最大の魅力は、その手軽さです。特別な専用機材を必要とせず、一般的なVHF/UHF帯の送受信が可能なFMトランシーバー、特にハンディ機と適切なアンテナがあれば、比較的容易に衛星通信の世界を体験することができます 。また、FMモードは音質が明瞭で聞き取りやすく、ある程度の周波数のズレにも強いため、衛星通信の入門には最適とされています 。
多くのFM衛星では、意図しない信号で中継器が起動するのを防いだり、特定の衛星を選択してアクセスしたりするために、送信電波にCTCSSトーン(トーンスケルチとも呼ばれる特定の低周波信号)を重畳することが求められます 。
必要な機材
-
トランシーバー (Transceiver):
FM衛星との交信には、144MHz帯と430MHz帯の送受信が可能で、かつ送受信周波数を別々に設定できるスプリット運用機能を持つFMトランシーバーが必要です。多くのFM衛星はアップリンクとダウンリンクで異なるバンド(例えば145MHz帯アップリンク/435MHz帯ダウンリンク、またはその逆)を使用するため、このクロスバンド運用への対応が鍵となります。ハンディ機でも十分に楽しむことができ、実際に多くの実績があります 。具体的な機種としては、アルインコ社のDJ-G7、ケンウッド社のTH-D74、八重洲無線社のFT1XDなどが挙げられますが 、これらと同等の機能を持つ他の機種でも問題ありません。ただし、一部のトランシーバーでは、片方のバンドで送信中にもう片方のバンドの受信がミュート(消音)されてしまう場合があるため注意が必要です。理想的には、送信中もダウンリンク信号を受信できる(フルデュープレックスに近い)機能を持つか、あるいは迅速に送受信を切り替えられる機種が望ましいです(例:DJ-F7はUHF送信中もVHF受信が可能とされています )。 -
アンテナ (Antenna):
ハンディ機に標準で付属しているホイップアンテナでも、条件が良ければ衛星からの信号を受信することは可能です。しかし、より安定した交信を望むのであれば、ある程度の利得(ゲイン)を持つアンテナの使用が強く推奨されます 。例えば、第一電波工業社のSRH770S(全長約70cmのホイップアンテナ)などが実績のある選択肢として挙げられます 。 さらに本格的に楽しむためには、手持ちで扱える小型の八木アンテナ(例:2エレメントから5エレメント程度)が非常に有効です。八木アンテナは指向性があるため、衛星の方向に正確に向けることで、信号強度を格段に向上させることができます 。段ボールとアルミホイルでコーナーリフレクタアンテナを自作するなど、アンテナの自作に挑戦するのもアマチュア無線の楽しみの一つです 。 -
その他アクセサリー (Other Accessories):
ハンディ機でFM衛星を運用する場合、スピーカーマイクはほぼ必須のアイテムと言えるでしょう。衛星を追尾しながらアンテナを最適な方向へ向け、同時に送信操作(PTT操作)を行うためには、本体から独立したマイクとスピーカーが非常に役立ちます 。ヘッドセットやイヤホンマイクも使用可能ですが、機種によっては大きな音を出すと音割れしやすいものもあるため、選択には注意が必要です。運用準備と実践
-
衛星の軌道予測と通過情報の確認: アマチュア衛星は地球の周りを常に移動しているため、「いつ、どの方角に、どのくらいの高さで見えるのか」を事前に把握することが不可欠です。これには、専用の軌道計算ソフトウェアやウェブサイト、スマートフォンアプリを利用します(詳細は後述の「7. 衛星運用のための情報収集」を参照)。
-
周波数設定とドップラー効果の簡易補正: 使用するFM衛星のアップリンク周波数、ダウンリンク周波数、そして必要であればCTCSSトーンを無線機に正確に設定します。ドップラー効果により、衛星が接近してくる際はダウンリンク周波数が公称値よりも少し高めに、遠ざかる際は少し低めに聞こえます。FMモードの場合、この変化は比較的緩やかですが、受信機の周波数を公称の中心周波数から±5kHz~10kHz程度の範囲でゆっくりと変化させながら、最も強く明瞭に聞こえるポイントを探すのがコツです 。送信周波数は中心周波数に固定するか、受信周波数の変化に合わせて微調整することもあります。多くの無線機には複数のVFO(可変周波数発振器)やメモリーチャンネルがあるため、予想される周波数変化に合わせて事前にいくつかの周波数を登録しておくと、実際の運用時にスムーズに対応できます。
-
アンテナの向け方と交信のコツ: FM衛星の運用は、単に無線機を設定して待つだけではありません。衛星の見える方角(方位角・仰角)に合わせてアンテナを向け、パス中も衛星の動きを追ってアンテナの方向を調整し続ける、アクティブでダイナミックな作業です。ハンディ機の場合、本体ごとアンテナをゆっくりと上下左右に動かし、受信信号が最も強くなる方向を探します 。時にはアンテナを少し下向きにした方が良好な結果が得られることもあるなど 、偏波面の変化なども考慮しながら試行錯誤することが成功への近道です。 衛星が地平線から現れて再び沈むまでの可視時間(パス)は、通常10分から長くても15分程度と短いため 、手際の良い運用が求められます。 自分の送信電波が衛星に届いているか(つまり、自分の声が衛星を経由して地上に返ってくるか)を確認しながら呼び出しを行う「セルフスポット」が理想的ですが、ハンディ機1台での運用では、自分のダウンリンク信号を同時に聞くことは難しい場合が多いです 。その場合は、相手局からの応答を待つことになります。 特に週末など利用者が多い時間帯は混信も予想されるため、比較的空いている早朝や深夜を狙う、あるいは仰角が十分に高い(天頂近くを通過する)パスを選ぶなどの工夫も有効です 。 呼び出しは簡潔に、「CQサテライト、こちらは<ご自身のコールサイン>です」のように行います。国際宇宙ステーション(ISS)など、特定の衛星を呼び出す場合は「CQ ISS、こちらは…」とすることもあります。 国際アマチュア無線連合(IARU)が推奨する運用ガイドラインにもあるように、送信は短時間(例えば20秒以内)にとどめ、他の局が応答したり呼び出したりする機会を確保するために、送信と送信の間には適切な間隔を空けるなど、譲り合いの精神で運用することが大切です 。
主要なFM衛星リスト
以下に、現在運用中または比較的利用しやすい主要なFM衛星のリストを示します。運用状況は変動することがあるため、最新の情報はAMSATなどのウェブサイトで確認してください。
衛星名 (愛称/型式名) | コールサイン | アップリンク周波数 (MHz) | アップリンク CTCSS (Hz) | ダウンリンク周波数 (MHz) | 運用状況/備考 |
---|---|---|---|---|---|
AO-91 (RadFxSat / Fox-1B) | AO-91 | 435.250 | 67.0 | 145.960 | バッテリー状態により、衛星が地球の影に入っている(日食)間のアクセスは推奨されない 。 |
SO-50 (SaudiSat-1C) | SO-50 | 145.850 | 67.0 | 436.795 | 運用前に74.4HzのCTCSSトーンを2秒間送信して10分タイマーを起動する必要あり 。 |
ISS (国際宇宙ステーション) | ARISS (NA1SS) | 145.990 | 67.0 | 437.800 | 音声レピータの運用は不定期。ARISSのウェブサイトで運用状況を確認 。APRSデジピータは別途運用。 |
AO-123 (ASRTU-1) | AO-123 | 145.850 | 67.0 | 435.400 | 運用中 。 |
CAS-3H (LilacSat-2) | CAS-3H | 144.350 | なし | 437.200 | FMトランスポンダの運用は不定期。非運用時は同周波数でテレメトリビーコン送信 。 |
IO-86 (LAPAN-A2) | IO-86 | 145.880 | 88.5 | 435.880 | 赤道傾斜角が小さいため、主に低緯度地域で利用可能。運用スケジュールはX (旧Twitter) で告知されることがある 。 |
PO-101 (Diwata-2) | PO-101 | 437.500 | 141.3 | 145.900 | 運用終了が近い可能性あり。スケジュール運用。X (旧Twitter) で告知されることがある 。 |
SO-124 (HADES-R) | SO-124 | 145.925 | なし | 436.885 | 運用中 。 |
SO-125 (HADES-ICM) | SO-125 | 145.875 | なし | 436.666 | 運用中 。 |
注: 上記の情報は2025年6月時点のものを参考にしています。最新の周波数や運用状況は、必ずAMSATのウェブサイト (https://www.amsat.org/status/ や https://www.amsat.org/live-fm-satellites/) などで確認してください。
方法2:リニアトランスポンダ衛星によるSSB/CW交信
リニアトランスポンダの仕組みと特徴
リニアトランスポンダは、FM衛星が単一のFMチャンネルを中継するのとは異なり、ある一定の周波数帯域幅(パスバンドと呼ばれます)内に入力された複数の信号全体を、そのままの形で別の周波数帯に変換して再送信する中継器です 。これにより、そのパスバンド内であれば、複数のアマチュア無線局が同時にSSB(単側波帯)やCW(電信)といったモードで交信することが可能になります 。まさに「n対nの通信」が実現できるわけです。
リニアトランスポンダは、入力された信号の強さに比例した強さで出力信号を送信する特性を持っています。しかし、これは同時に、非常に強力な信号が一つ入力されると、他の微弱な信号が抑圧されて聞こえにくくなってしまうという現象も引き起こす可能性があります。そのため、送信出力の適切な管理が求められます。
多くのリニアトランスポンダには、インバーティング(周波数反転型)とノンインバーティング(周波数非反転型)の2つのタイプがあります。インバーティング型の場合、アップリンク周波数帯の高い側の信号はダウンリンク周波数帯の低い側に変換され、逆にアップリンク周波数帯の低い側の信号はダウンリンク周波数帯の高い側に変換されます。例えば、日本のアマチュア衛星「ふじ3号(FO-29)」に搭載されているJモードトランスポンダは、逆ヘテロダイン方式であり、インバーティング型の一例です 。過去に運用されていたNEXUS衛星も、145MHz帯でアップリンクされたアナログ信号(SSB/CW)を435MHz帯に変換してダウンリンクするリニアトランスポンダを搭載していました 。
必要な機材
リニアトランスポンダ衛星を介したSSB/CW交信は、FM衛星による交信と比較して、一般的に高度な機材と運用技術が求められます。これは、より微弱な信号を扱い、精密な周波数制御とアンテナ追尾が必要となるためです。
-
トランシーバー (Transceiver): SSBモードおよびCWモードの送受信が可能なオールモードトランシーバーが必須です 。主にVHF帯(144MHz帯)とUHF帯(430MHz帯)に対応したものが一般的ですが、衛星によってはHF帯(例えば28MHz帯)をダウンリンクに使用するものもあります(例:RS-10、RS-12、RS-15など )。 最も重要な機能は、送受信周波数を独立して、かつ連続的に可変できるスプリットVFO機能です。ドップラー効果による周波数変化にリアルタイムで対応するため、メインダイヤルで受信周波数を、サブダイヤル(またはそれに類する機能)で送信周波数を同時に、かつスムーズに調整できる機種が非常に有利となります。
-
アンテナ (Antenna): 衛星からの信号は微弱であり、かつ地球の磁場の影響などで偏波面が回転する(ファラデー回転)ため、指向性のある高性能なアンテナが推奨されます。一般的には、八木アンテナ(クロス八木アンテナや円偏波八木アンテナが望ましい)が使用されます 。これにより、特定の方向からの信号を効率よく捉え、かつ偏波面の変化による受信レベルの低下を最小限に抑えることができます。 多くの場合、アップリンク用(例:144MHz帯)とダウンリンク用(例:430MHz帯)のアンテナがそれぞれ必要になりますが、デュアルバンド対応の八木アンテナも選択肢の一つです。 ローテーター (Rotator): 指向性の鋭い八木アンテナを使用する場合、衛星の動きに合わせてアンテナの方向を正確に追尾し続ける必要があります。そのため、方位角(AZimuth)と仰角(ELevation)の両方を調整できるAZ/ELローテーターの使用が強く推奨されます 。手動でのアンテナ追尾も不可能ではありませんが、特に衛星が高仰角で通過する際には非常に難易度が高くなります。 プリアンプ (Preamplifier): 受信信号が非常に微弱な場合、アンテナの直下に低雑音のプリアンプ(LNA: Low Noise Amplifier)を設置することで、受信感度を大幅に改善できることがあります 。 同軸ケーブルとコネクタ (Coaxial Cable and Connectors): 高周波信号の損失を最小限に抑えるため、低損失で高品質な同軸ケーブルを使用することが重要です。特にUHF帯(430MHz帯)以上では、一般的なM型コネクタよりも特性の良いN型コネクタの使用が望ましいとされています 。 このように、SSB/CWでの衛星通信には、FM衛星運用に比べて設備投資と設置スペース、そして運用ノウハウの面で、より高いハードルがあることを理解しておく必要があります。
運用準備と実践
-
より精密なドップラー効果の追尾と補正: SSBやCWといった狭帯域モードでは、FMモードよりもはるかに精密なドップラー効果の補正が求められます。ドップラーシフトはアップリンク周波数とダウンリンク周波数の両方に影響を及ぼし、その変化量は衛星の速度と周波数に比例します。例えば、HO-68衛星の435.790MHzのCWビーコンは、衛星出現時(AOS: Acquisition of Signal)には公称周波数より最大で約9kHz高く聞こえ始め、衛星が頭上を通過する頃に公称周波数に近づき、衛星消滅時(LOS: Loss of Signal)近くには約9kHz低くなるという報告があります 。この大きな周波数変化に対応できないと、全く交信になりません。 多くのリニアトランスポンダでは、アップリンク周波数とダウンリンク周波数の間に一定の関係(例えば合計が一定、あるいは差が一定)があるように設計されているため、理論上は片方の周波数を調整すればもう一方も追従するように計算できます。しかし実際には、両方の周波数をリアルタイムで微調整しながら、相手局の信号が最も明瞭に聞こえ、かつ自分の送信信号が相手に正しく届くように最適点を探し続ける必要があります。 衛星がこちらに接近してくる時は、ダウンリンク周波数が高くシフトするため、受信周波数を徐々に下げていく必要があります。同時に、衛星から見て正しい周波数で受信されるためには、アップリンク周波数を通常よりも低めに送信し、徐々に上げていく必要があります(インバーティング型トランスポンダの場合は逆の操作になることもあります)。この複雑な操作を支援するために、一部の軌道計算ソフトウェアには、ドップラーシフト量をリアルタイムで計算し、対応する無線機をCAT(Computer Aided Transceiver)システム経由で制御して周波数を自動補正する機能が搭載されているものもあります(例:FunTrackソフトウェアと八重洲無線FT-736の連携 )。
-
アンテナの正確な追尾: 指向性の鋭い八木アンテナを使用するため、衛星の位置に合わせてリアルタイムでアンテナの方向(方位角と仰角)を調整し続けることが、強力な信号を得るための絶対条件です。軌道計算ソフトウェアで表示される衛星の現在位置に、アンテナを正確に向け続ける必要があります。
-
SSB/CWモードでの交信テクニック: リニアトランスポンダのパスバンド内は、複数の局が同時に利用しているため、混み合っている場合があります。まずはパスバンド全体を聞き、空いている周波数を見つけてCQ(不特定多数の局への呼び出し)を出すか、他局のCQに応答します。 最も重要なのは、自分の送信信号が衛星を経由して適切に地上に返ってきているかを常にモニターすることです(セルフモニタリング)。自分の声やCW符号が、エコーのように少し遅れて聞こえてくるのが衛星通信の特徴であり 、この返ってきた信号を聞きながら、送信出力や周波数を微調整します。 CWで交信する場合、ドップラー効果によって受信信号のピッチ(音調)も変化することに注意が必要です。 衛星からの信号は弱い場合が多いため、SSBでは明瞭な発音を、CWでは正確なキーイングを心がけることが大切です。
主要なリニアトランスポンダ搭載衛星リスト
以下に、SSB/CWモードでの交信に利用できる主要なリニアトランスポンダ搭載衛星の例を示します。運用状況は常に変動するため、最新の情報はAMSATなどのウェブサイトで確認してください。
衛星名 (愛称/型式名) | コールサイン | アップリンク周波数帯 (MHz) | ダウンリンク周波数帯 (MHz) | CWビーコン周波数 (MHz) | モード | 運用状況/備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
FO-29 (ふじ3号/JAS-2) | 8J1JCS | 145.900 – 146.000 (SSB/CW) | 435.800 – 435.900 (SSB/CW) | 435.795 (公称) | SSB/CW (Jモード, 反転型) | 打ち上げから長期間経過しており、バッテリー状態などにより運用が不安定な場合や、スケジュール運用となる場合がある 1 。JARLのウェブサイトで運用予定を確認。 |
RS-44 | RS-44 | 145.935 – 145.995 (SSB/CW) | 435.670 – 435.610 (SSB/CW) | 435.605 | SSB/CW | アクティブに運用されていることが多い 2 。FT8など他のデジタルモードとの混信を避けるため、推奨運用周波数が調整されることがある 3 。 |
AO-7 (AMSAT-OSCAR 7) | AO-7 | 145.900 – 145.970 (Mode A, USB) / 432.125 – 432.175 (Mode B, LSB) | 29.400 – 29.500 (Mode A, LSB) / 145.975 – 145.925 (Mode B, USB) | 29.502 (Mode A, 停波中との情報あり), 145.972 (Mode B) | SSB/CW | 1974年打ち上げの長寿衛星。太陽電池の状況により、日照時のみ運用可能(Mode A/Bが交互または不定期に動作)。非常に不安定な状態が報告されている 4 。 |
注: 上記の情報は2025年6月時点のものを参考にしています。衛星の運用状況、周波数、ビーコン等は変更される可能性があります。必ずAMSATのウェブサイト (www.amsat.org/status/) やJAMSAT、JARLの情報を確認してください。
方法3:APRSを利用した衛星経由のデータ通信
APRSとは?衛星APRSの楽しみ方
APRS(Automatic Packet Reporting System)は、アマチュア無線のパケット通信技術を応用して、位置情報、気象情報、短いテキストメッセージなどをリアルタイムで交換するためのシステムです 。地上波のAPRSでは、ローカルなデジピータ(デジタルリピータ)やインターネットゲートウェイ(IGate)を介して情報が伝達されます。
衛星APRSでは、APRSのパケット中継機能(デジピータ)を搭載したアマチュア衛星、特に有名なのは国際宇宙ステーション(ISS)を利用します 。これらの衛星を介することで、地上波では届かないような非常に広範囲の局とデータ通信を楽しむことができます。例えば、自分の現在位置情報(GPSデータに基づく)をビーコンとして発信し、それが衛星を経由して他の局に受信され、地図上に表示されたり、逆に他の局の位置情報をリアルタイムで把握したりすることができます。また、短いテキストメッセージの交換も可能です。このAPRSは、無線通信、GPSによる測位技術、そしてコンピュータやスマートフォンによる情報処理・表示技術が融合した、現代的なアマチュア無線の楽しみ方の一つと言えるでしょう。
国際宇宙ステーション(ISS)には、アマチュア無線用のAPRSデジピータが搭載されており、世界共通の周波数である145.825MHz(FMモード、パケットデータレート1200bps AFSK)で運用されています 。アマチュア無線家であれば、特別な許可なしにこのISSのデジピータを利用して、自分のAPRSパケット(位置情報ビーコンやメッセージ)を中継させたり、世界中の他のアマチュア無線局が発信したパケットを受信したりすることができます。
ISSは高度約400kmの低軌道を周回しており、比較的強力な信号で送信してくるため、後述するような簡易な設備でも十分に信号を受信し、デジピートを利用することが可能です。ただし、ISSのAPRSデジピータの運用状況は、宇宙飛行士の船外活動(EVA)の予定や他の実験スケジュールなどにより、不定期に一時停止されることがあるため、ARISS(Amateur Radio on the International Space Station)のウェブサイトなどで事前に情報を確認することが推奨されます 。
必要な機材とソフトウェア
-
APRS対応無線機 (APRS-Capable Radios): 最も手軽に衛星APRSを始める方法は、APRSモデム(TNC: Terminal Node Controller)とGPS受信機を内蔵したハンディ機やモービル機を使用することです。これらの無線機は、単体でGPSから取得した位置情報をAPRSパケットとして自動的に送信したり、受信したAPRSパケットの情報を表示したりすることができます。代表的な機種としては、ケンウッド社のTH-D74 やTH-D75 、八重洲無線社のFT1XD 、FT5D 、FTM-400D などがあります。
-
TNCまたはサウンドカードインターフェース (TNC or Sound Card Interface): もしAPRS機能を内蔵していない既存のVHF/UHFトランシーバーを使用する場合は、外付けのTNC、またはパーソナルコンピュータのサウンドカードと専用ソフトウェアを利用したソフトウェアTNCが必要になります。ソフトウェアTNCは、サウンドカードを介して無線機のマイク入力・スピーカー出力とPCを接続し、PC上でパケット信号の変復調処理を行うものです 。
-
PC/スマートフォンアプリ (PC/Smartphone Apps): 受信したAPRSデータを地図上に表示したり、メッセージの送受信を行ったり、無線機やTNCの設定を管理したりするために、APRSに対応したソフトウェアやアプリケーションが必要です。PC用のソフトウェアとしては、衛星通信に特化した機能を持ち、ドップラー補正(ISSのAPRSでは通常不要ですが)やメッセージ送受信を効率的に行えるよう工夫されているUISSなどが知られています 。また、PinPoint APRSのような汎用APRSソフトウェアも利用可能です 。近年では、スマートフォン向けのAPRSアプリケーションも登場しており、より手軽にAPRS運用を楽しむことができます。
-
アンテナ (Antenna): FM衛星の音声通信で使用するものと同様のVHFアンテナ(ハンディ機付属のホイップアンテナ、モービル用のホイップアンテナ、あるいは小型の八木アンテナなど)を使用します。ISSからのAPRS信号は比較的強力であるため、多くの場合、屋外で見通しの良い場所であれば、ハンディ機のホイップアンテナでも十分に受信可能です。より安定した通信を望む場合は、やはり外部アンテナの使用が推奨されます。
設定と運用のポイント
- 無線機の設定: APRS対応無線機を使用する場合、まず自局のコールサインとSSID(通常、移動局の場合は-9など)を正確に設定します 。次に、APRSの運用周波数を設定します。ISSの場合は145.825MHzです。
- GPS機能の有効化: 無線機内蔵または外付けのGPS受信機を有効にし、自局の正確な位置情報が取得できるようにします 。
- ビーコン送信設定: 自分の位置情報をどのくらいの頻度で送信するか(ビーコン送信間隔)、ビーコンに含めるコメント(ステータステキスト)、表示されるシンボル(アイコン)などを設定します 。衛星APRSの場合、衛星の可視時間が短いため、地上波のAPRSよりもやや短めの送信間隔(例えば1~2分ごと)に設定することが多いですが、衛星が混み合っている場合は控えめにする配慮も必要です。
- 送信タイミング: ISSが自局から見て可視範囲内(地平線より上に見える範囲)にある時間帯に送信します。そのため、事前に衛星の軌道予測ツールでISSの通過時刻と方角を確認しておくことが必須です。
- デジピートパスの確認: 送信するAPRSパケットのデジピートパス(中継経路)として、ISSのAPRSデジピータのコールサイン(通常「ARISS」または「RS0ISS」など)を指定します。これにより、送信したパケットがISSによって中継されるようになります。
- 受信確認: ソフトウェアを使用している場合は、ISSから中継されてくる他の局のパケットや、自分自身が送信したパケットが中継されて戻ってくるのを確認します。
ISS APRS運用情報
機能 | 周波数 (MHz) | モード | デジピータコールサイン (例) | 備考 |
---|---|---|---|---|
APRSデジピータ | 145.825 | FMパケット (AFSK 1200bps, AX.25) | ARISS, RS0ISS, WIDE1-1 | アップリンク・ダウンリンク共用 。運用は不定期な場合あり。 |
注: ISSのAPRSデジピータコールサインは変更されることがあります。最新情報はARISSのウェブサイトやAPRS関連のコミュニティで確認してください。
その他の楽しみ方
上記で紹介したFM音声交信、SSB/CW交信、APRSデータ通信の他にも、アマチュア衛星を活用した楽しみ方があります。ここでは、比較的受信に特化した活動を2つ紹介します。これらは送信設備が不要な場合もあり、衛星通信の第一歩として、あるいは手軽な楽しみとして適しています。
デジトーカの受信
一部のアマチュア衛星には、「デジトーカ」と呼ばれる音声合成による情報送信機能が搭載されていました。例えば、過去に日本が打ち上げた「ふじ3号(FO-29)」もこの機能を備えていました 。デジトーカは、衛星の現在の状態に関するテレメトリデータや、運用者からのメッセージなどを、合成音声でダウンリンク送信するものです。
大学や研究機関の衛星からのビーコン受信
近年、国内外の大学や研究機関によって、教育や技術実証を目的とした多くの超小型衛星(CubeSatなど)が開発・打ち上げられています。これらの衛星の多くは、アマチュア無線で使用される周波数帯を利用して、衛星の健康状態を示すテレメトリデータや、簡単な識別信号(CWビーコンなど)を発信しています 。
これらの衛星から発信されるビーコン信号の周波数や電波型式(CW、FSK、PSKなど)、データフォーマットは、開発した大学やJAMSATなどの関連団体のウェブサイトで公開されていることが多く、アマチュア無線家はこれらを受信し、デコードに挑戦することができます。例えば、過去には日本の大学が開発したPRISM、SPROUT、HORYU-2といった衛星が、アマチュア無線帯でビーコンを発信し、多くのハムによって受信・解析が行われました 。
ビーコンの受信は、それ自体が衛星の「声」を聞く楽しみであると同時に、CWの聞き取り練習になったり、デジタル信号のデコード技術を学んだりする良い機会にもなります。また、受信報告を衛星運用チームに送ることで、衛星の状態把握に貢献できる場合もあります。この活動は、送信設備が不要で、比較的簡単な受信設備から始められるため、衛星通信への入門や、より技術的な探求をしたいアマチュア無線家にとって魅力的な分野です。
これらの受動的なリスニング活動は、実際に双方向の交信を試みる前に、衛星からの信号に慣れ親しみ、自信をつけるための良いステップとなります。必要な機材も比較的少なく、運用上の複雑さも少ないため、気軽に宇宙からの電波を感じる第一歩として推奨されます。
衛星運用のための情報収集
アマチュア衛星通信を成功させるためには、適切な無線設備を揃えることと同じくらい、あるいはそれ以上に、正確で最新の情報を収集することが不可欠です。衛星は常に地球の周りを高速で移動しており、特定の場所から見える時間(パス)や方角は刻一刻と変化します。また、衛星自体の運用状況も一定ではありません。これらの情報を得るためのツールや情報源を理解し、活用することが、衛星QSOへの第一歩となります。
軌道予測ツール
アマチュア衛星がいつ、どの方角(方位角・仰角)に見えるのかを予測するためには、軌道予測ツールが必須です。これらのツールは、衛星の軌道要素(TLE: Two-Line Elements と呼ばれる形式のデータ)を元に、指定した観測地点からの衛星の見え方を計算してくれます。
-
ソフトウェア (Software): パーソナルコンピュータ上で動作する専用ソフトウェアは、詳細な軌道計算機能に加え、リアルタイムでの衛星追尾表示、ローテーター制御機能、ドップラー周波数自動補正機能などを備えているものがあります。
- 代表的な例として、FunTrack (Fun Laboratory JR2PHC)があります。このソフトウェアは、詳細な軌道表示だけでなく、対応するインターフェース(例:Fun-232)を介してアンテナローテーターを自動制御したり、対応無線機(例:YAESU FT-736)の周波数をドップラー効果に合わせて自動調整したりする高度な機能を備えています 。
-
ウェブサイト (Websites): インターネットに接続できる環境であれば、手軽に衛星の通過時刻や方位・仰角を調べることができます。ソフトウェアのインストールも不要です。
- JAMSAT 日本各地の衛星通過時刻の予報: JAMSATが提供するサービスで、日本地図上で観測地点に近い場所をクリックするだけで、主要なアマチュア衛星の通過予報を簡単に確認できます 。初心者にも分かりやすいインターフェースです。
- AMSAT Online Satellite Pass Predictions: AMSAT-NA(北米AMSAT)などが提供するウェブベースの軌道予測サービスも広く利用されています。
- N2YO.com: (https://www.n2yo.com/)リアルタイムでの衛星追跡機能や、個々の衛星に関する詳細な情報(周波数、運用モード、TLEデータなど)も提供しており、非常に便利なサイトです(例えば、RS-44衛星の運用情報源としても活用されています )。
-
スマートフォンアプリ (Smartphone Apps): 外出先でも手軽に衛星の軌道情報を確認できるため、移動運用時などに便利です。一部のアプリには、スマートフォンのカメラとセンサーを利用して、実際の空に衛星の位置を重ねて表示するAR(拡張現実)機能が搭載されているものもあります。
- 例として、GNSS View(https://qzss.go.jp/technical/gnssview/index.html )や、Satellite Tracker (https://stdkmd.net/sat/)といった汎用的な衛星追跡アプリがあります。アマチュア衛星に特化したアプリも探してみると良いでしょう。
これらの軌道予測ツールを使いこなすことは、衛星通信の成否を左右する重要な要素です。どのツールを使うにしても、最新のTLEデータを定期的に更新することを忘れないでください。
衛星の最新運用状況の確認方法
アマチュア衛星は、常に正常に運用されているとは限りません。搭載バッテリーの状態、科学実験のスケジュール、機器の故障、あるいは軌道上の日照条件など、様々な要因によって一時的に運用が停止されたり、運用モードが変更されたりすることが頻繁にあります。そのため、実際に衛星を利用しようとする前には、必ず最新の運用状況を確認することが重要です。
-
AMSATの衛星運用状況ページ (AMSAT Satellite Status Page): 最も信頼性が高く、包括的な情報源の一つが、AMSAT \が提供している衛星運用状況ページです(URL: https://www.amsat.org/status/)。このページには、世界中のアマチュア無線家からのリアルタイムな運用報告が集約されており、各衛星が現在どのような状態で運用されているか(例:トランスポンダがアクティブか、ビーコンのみか、信号なしなど)を一覧で確認できます 。
-
X (旧Twitter) などのSNS: 近年では、衛星の運用チームや個々のアマチュア無線家が、X (旧Twitter) などのソーシャルメディアを通じて、衛星の運用スケジュールや突発的な状況変化に関する情報を発信することも増えています。例えば、PO-101 (Diwata-2) や IO-86 (LAPAN-A2) といった衛星のFMトランスポンダ運用スケジュールが、それぞれの運用機関の公式アカウントから告知されるケースがあります 。
これらの情報源を複合的に活用し、常に最新の情報を得るよう努めることが、無駄な呼び出しを避け、効率的に衛星通信を楽しむための鍵となります。
安全な運用とマナーについて
最後に、アマチュア衛星通信を楽しむ上で非常に重要な点として、安全な運用とマナーの遵守を改めて強調しておきたいと思います。アマチュア無線は電波法規に基づいて運用されるものであり、そのルールを守ることは当然の責務です。
加えて、アマチュア衛星は、国境を越えて世界中の多くの人々が利用する限られた共有リソースです 。特に低軌道衛星の場合、可視時間(パス)は短く、利用できる周波数帯域も限られています。このような状況下では、一人ひとりのオペレーターが他者への配慮を忘れず、マナーを守った運用を心がけることが、コミュニティ全体の健全な発展と、誰もが公平にこの趣味を楽しむために不可欠です。
例えば、FM衛星の運用に関するIARU(国際アマチュア無線連合)のガイドラインでは、送信は短時間(20秒以内)にし、送信と送信の間には他の局が送信できる間隔を空けること、進行中の交信に割り込まないこと、送信前に周波数が使用されていないか十分にモニターすることなどが推奨されています 。これらの指針は、FM衛星に限らず、他のモードでの衛星通信においても基本的に尊重されるべき考え方です。
譲り合いの精神を持ち、常に他の利用者のことを考えた運用を心がけることで、アマチュア衛星通信はより楽しく、より豊かな趣味となるでしょう。