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JAS-2「ふじ3号」とは?アマチュア無線家なら知っておきたい衛星通信の魅力と技術

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宇宙からの声を聴け!アマチュア衛星「ふじ3号(FO-29)」徹底解説ガイド

夜空を見上げ、遥か上空を通過する人工衛星を介して見知らぬ誰かと繋がる。アマチュア無線の醍醐味の一つである「衛星通信(サテライト通信)」において、日本が誇る名機といえば「ふじ3号(JAS-2)」です。

1996年の打ち上げ以来、多くの無線家を魅了してきたこの衛星は、単なる通信中継器以上の存在として、私たちの記憶に刻まれています。本記事では、ふじ3号の歴史から、初心者でも挑戦できる運用方法、そして現在の運用ステータスまでを網羅的に解説します。


日本の誇り、アマチュア衛星「ふじ」シリーズの歴史

アマチュア衛星「ふじ」シリーズは、一般社団法人 日本アマチュア無線連盟(JARL)が開発し、当時の宇宙開発事業団(NASDA、現JAXA)によって打ち上げられた人工衛星です。

  • ふじ1号(JAS-1): 1986年打ち上げ。日本初のアマチュア衛星。

  • ふじ2号(JAS-1b): 1990年打ち上げ。1号の予備機。

  • ふじ3号(JAS-2): 1996年打ち上げ。シリーズの集大成。

「ふじ3号」は、1996年8月17日、種子島宇宙センターからH-IIロケット4号機によって打ち上げられました。高度約800kmから1,300kmの楕円軌道を周回しており、地球を約100分で1周しています。

独自視点:打ち上げ当時の熱狂

筆者が今でも覚えているのは、打ち上げ成功のニュースが流れた時の無線ショップの盛り上がりです。当時はインターネットも黎明期でしたが、パケット通信(デジタルモード)への期待が高く、「宇宙に掲示板ができる!」というワクワク感で溢れていました。


「ふじ3号」の技術仕様と通信モード

ふじ3号は、大きく分けて2つの通信モードを備えています。

1. アナログモード(Mode V/U)

SSBやCW(モールス信号)によるリアルタイムの交信に使用されます。ふじ3号のメインとも言えるモードです。

  • アップリンク(送信): 145.90 – 146.00 MHz (LSB/CW)

  • ダウンリンク(受信): 435.80 – 435.90 MHz (USB/CW)

2. デジタルモード(パケット通信)

1200bps/9600bpsのパケット通信を行うモードです。メールの転送や電子掲示板のような使い方が可能でしたが、現在は主にアナログモードの運用が中心となっています。

テレメトリ信号

衛星の健康状態(電圧や温度など)を示す信号が435.795MHz付近で送信されており、これを解析することで、今衛星がどのような状態にあるかを知ることができます。


実践!ふじ3号で交信するためのステップ

「人工衛星を使うなんて、巨大なパラボラアンテナが必要なのでは?」と思うかもしれませんが、実はハンディ機と簡易的な八木アンテナ(手持ち)でも十分に可能です。

ステップ1:軌道計算(トラッキング)

衛星は常に動いているため、「いつ、どこを通るか」を知る必要があります。 現在では、スマホアプリ(例:ISS Detector, Heavens-Above ※ページ末尾にリンク在り)で簡単に予測できます。

ステップ2:ドップラーシフト対策

衛星通信最大の難関が「ドップラーシフト」です。救急車のサイレンと同じ原理で、衛星が近づく時は周波数が高く、遠ざかる時は低く聞こえます。

  • 受信(435MHz帯)は変化が大きいため、こまめにダイヤルを回して周波数を追従する必要があります。

ドップラーシフト 地球 スペースドア SPACEDOOR

ステップ3:自分の声を聴く(ループバック)

ふじ3号のようなアナログ衛星では、自分の送信した電波が衛星で中継され、自分に戻ってきます。 「ハロー、こちらはJQ1XXX」と送信し、わずかな遅延の後に自分の声が聞こえてきた時の感動は、何度経験しても鳥肌が立つものです。


【重要】ふじ3号の現在の運用ステータスと注意点

打ち上げから間もなく30年が経過しようとしている「ふじ3号」は、現在バッテリーの老朽化という深刻な問題を抱えています。

  • 日照時のみ運用可能: 太陽光パネルに光が当たっている間だけ電力が供給され、中継器が動作します。地球の影(食)に入ると、電源が落ちてしまいます。

  • 送信出力の抑制: バッテリーを保護するため、JARL(日本アマチュア無線連盟)によって運用のオン/オフが制御されています。

※最新の運用予定については、JARLの公式サイトJAMSAT(日本アマチュア衛星協会)の情報を必ず確認してください。


ふじ3号が教えてくれること

ふじ3号(FO-29)は、日本の技術力の高さと、アマチュア無線家たちの「繋がりたい」という純粋な情熱の結晶です。

  • 歴史: 1996年打ち上げの、日本を代表するアマチュア衛星。
  • 技術: アナログ(SSB/CW)通信が可能で、ドップラーシフトの攻略が鍵。
  • 現状: バッテリー劣化により、日照時中心の限られた運用。

もしあなたが「アマチュア無線を使って宇宙」と思っているなら、ぜひ一度、ふじ3号の信号を追いかけてみてください。その微かな信号の向こうには、無限に広がる宇宙のロマンが待っています。

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こんにちは!オンエアーズの編集長mayasaです。 小学生の時にアマチュア無線の電話級を取得、高校1年で2アマ(当時はモールスの聞き取りがありました!)大人になってから1アマを取得しました!大学では電子工学を学び、電子回路の制作などを行っていました。 日頃からアマチュア無線の普及啓蒙活動に取り組んでいます。 子どもから大人まで多くの人にアマチュア無線の資格取得のための講習会を開催しています。 【関連資格】 第一級アマチュア無線技士 第一級陸上特殊無線技士