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1976年、沖ノ鳥島でアマチュア無線を運用。一般が参加できた同島での唯一のアクティビティ。

1976年、沖ノ鳥島でアマチュア無線を運用。一般が参加できた同島での唯一のアクティビティ。

日本最南端の島からのアマチュア無線運用が意味するもの

そもそも沖ノ鳥島とは?

沖ノ鳥島は日本最南端のサンゴ礁の小さな島です。過去1540年ごろから外国船により発見された記録が残っていて、日本が初めて調査を行ったのは1922年(大正11年)です。1931年に島の名前を「沖ノ鳥島」とし、東京府(現在の東京都)に編入されました。

 

以下が沖ノ鳥島の場所です。(拡大していくとサンゴ礁が見えます)

 

沖ノ鳥島の位置

 拡大地図

 

沖ノ鳥島は北緯20度25分、東経136度04分に位置し、東京からはおよそ1,700㎞、小笠原諸島の最南端「父島」からも900㎞程度離れています。現在は国土交通省により管理されている日本の領土です。満潮時には70㎝程度の小島ですが、東西4.5km、南北1.2kmに及ぶサンゴ礁が広がる島です。

 

日本政府は護岸工事に300億円を投じるなど沖ノ鳥島を重要視しているのが排他的水域(EEZ)の喪失を防ぐためです。豊富な水産資源に恵まれているため漁場としての潜在能力が高く、またメタンハイドレートやレアアースなどの鉱物資源が多く存在しているため将来自国での資源確保につながるからです。

 

排他的水域(EEZ)とは、領海基線から200海里(1海里は約1.8㎞)以内で設定することができ、沿岸国がその範囲内で天然資源の探査・開発、漁業などの経済活動、海洋環境の保全などを行う事ができるエリアです。

 

しかしながら、周辺国からはこのエリアのEEZに対する異議の声も上がっています。2003年には突如中国が異議を唱え、日本の領土としては認めたものの、同島は島ではなく岩で、200海里のEEZは持たないと主張してきました。

 

外務省HPより排他的経済水域

外務省HPより排他的経済水域

 

アマチュア無線家による大きな貢献

 

アマチュア無線の世界では「DXペディション (DX expeditionを略したもの)」と呼ばれるアマチュア無線が使われていない国や無人島などに行き、そこから電波を出して世界中の人たちと交信する移動運用が行われています。DXとは長距離通信を意味する言葉です。最南端にある沖ノ鳥島に誰かが行って電波を出し、その電波を受信して沖ノ鳥島にいる人と交信するというのはアマチュア無線家の夢でもありました。

 

そしてそのチャンスがやってきます。

 

1976年5月、日本アマチュア無線連盟(JARL)が創立50周年の記念事業として「沖ノ鳥島DXペディション」を行う事になったのです。5月21日付けで関東電波管理局(現在の関東総合通信局)より無線局免許状が交付されコールサインのプリフィクスには特別に”7J1”が与えられました。(住所としては東京都小笠原村になるため本来であればJD1が与えられるはずです。)コールサインは7J1RLと決定しました。

 

このプロジェクトを成功に導いたのがアマチュア無線家である有坂芳雄団長率いる10名の派遣団です。小笠原諸島への貨物船として使われていた第二十共勝丸」をチャーターし、沖ノ鳥島に向かいました。自作のイカダや仮設小屋を用意し、発電機を搭載して小型船で沖ノ鳥島に上陸し、1976年5月30日9時12分~6月2日16時10分までのおよそ78時間運用を行いました。世界中から多くのアマチュア無線家が交信を行い、73の国から8931局が参加しました。

 

この沖ノ島DXペディションには大きな意味があります。世界のアマチュア無線家がDXペディションによる交信を楽しめただけでなく、日本の領土である沖ノ鳥島を世界にPRできました。

 

アマチュア無線は国際電気通信条約に付属する無線通信規則(Radio Regulation,RR)に基づいて各国が規則を定めています。国際的な法規にかかわるような活動が行われたという実績は、沖ノ鳥島の存在が諸外国にも認められたことにもつながります。当時アメリカの無線連盟(ARRL)では7J1を国またはそれに準じた地域区分として認めていました。

 

当時の貴重な映像がYOUTUBEに残っています。

 

出発から数々のトラブルなどを経て、最南端の見渡すと何もない海の中での作業風景はまさに「冒険」とも言えます。

 

今回の記事を書いたのは、2019年8月31日、9月1日に開催されたハムフェアにて当時の団長で、前アマチュア無線振興協会会長の有坂芳雄氏とお会いして直接お話しをお聞きすることができたからです。動画を見ているとアマチュア無線家というよりも冒険家といいっても過言ではありません。

 

その後1977年には7月に領海法、漁業水域に関する暫定処置法が施行され領海12海里、排他的水域(EEZ)200海里を有することになりました。これによりこの島の存在価値が大きくなりました。

 

沖ノ島DXペディションは1979年にもアマチュア無線家の藤原仁氏が単独で行いましたが、以降は行われていません。

 

沖ノ鳥島は現在特定離党港湾事務所により活動拠点整備事業が始まっています。南鳥島も含まれていて、今後排他的水域における海洋資源開発、利用、海洋調査などを行う際に安全に活動が行われるように船舶の係留ができる活動拠点を作ることを目的としています。

 

(到底離党港湾事務局ホームページ https://www.pa.ktr.mlit.go.jp/ritou/

 

極地で利用されているアマチュア無線

 

アマチュア無線が南極昭和基地にも設置してあったり、国際宇宙ステーションにも搭載してあるなど極地と呼ばれるところに持ち込まれるのは、万が一の最終的な通信手段となりえるからです。有事の際にいきなり使いだそうとおもっても使えないわけですから、日々レジャーや趣味、科学的な研究に使っていることで、いざという時に活用できるわけです。

 

アマチュア無線の開局数は現在およそ40万局程度ですが、ピーク時にはおよそ136万局でした。より多くの人がアマチュア無線をアウトドアやレジャー、実験、科学的研究に活用することで、新しい発見や安全な社会形成に貢献できるはずです。そんなことを思わせる有坂氏の冒険談でした。

 

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