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スマホが使えない!火山灰が降る中、アマチュア無線(144/430MHz)は本当に通信できるのか?

スマホが使えない!火山灰が降る中、アマチュア無線(144/430MHz)は本当に通信できるのか?

近年話題になっている富士山噴火リスクの際に無線通信は可能か?

近年、富士山の噴火リスクがメディアで頻繁に取り上げられるようになりました。内閣府の想定によれば、大規模な降灰が発生した場合、送電網のショートによる広域停電や、通信基地局のダウンにより、携帯電話やインターネットといった現代の主要インフラが長期間にわたって使用不能になる可能性が指摘されています。

そんな中、完全に独立したネットワークで通信が可能な「アマチュア無線」が、非常時の情報伝達手段として改めて大きな注目を集めています。

しかし、ここで一つの疑問が生じます。「空を覆い尽くすような火山灰が降り注いでいる最中、そもそも無線の電波はきちんと飛ぶのか?」

今回はオンエアーズ(OnAirs)が、ハンディ機やモービル機で最もポピュラーなVHF/UHF帯(144MHz/430MHz)に焦点を当て、降灰時の電波伝搬と運用における専門的な見解を解説します。

火山灰の粒子が「144/430MHzの電波」を遮ることはない

電波の知識がある人なら簡単に推察できてしまう事ですから、先に結論から申し上げますと、空間を漂う火山灰そのものが、144MHzや430MHz帯の電波を遮断したり、極端に減衰させたりする物理的な影響はほぼありません。

この理由は、電波の「波長」と火山灰の「粒子サイズ」の関係性にあります。

なぜ影響を受けないのか?(無線工学の視点から)

電波は、自身の波長に対して障害物が十分に小さい場合、それを回り込んで進む性質(回折)を持っています。

  • 144MHz帯の波長(λ): 約 2.0メートル

  • 430MHz帯の波長(λ): 約 0.7メートル(70センチ)

  • 火山灰の粒子: 通常 2ミリメートル以下(多くは数十〜数百マイクロメートル)

衛星放送(BS/CS)や気象レーダーなどで使われるマイクロ波(数GHz以上、波長が数センチ〜数ミリ)の場合、雨粒や雪によって電波が散乱・吸収される「降雨減衰(レイリー散乱等の影響)」が発生します。しかし、VHF(超短波)やUHF(極超短波)の波長はメートル単位であり、ミリ単位の火山灰は障害物として認識されず、空間の伝搬において電波が弱められることは計算上考えにくいのです。

危険なのは「二次的被害」。アンテナと設備に潜む3つの罠

空間の電波は飛んだとしても、安心してはいけません。実際に火山灰が降る環境下でアマチュア無線を運用する場合、無線設備と周辺環境に対する物理的・化学的な影響が致命的な通信障害を引き起こす可能性が高いからです。

1. アンテナへの付着によるSWR(定在波比)の急激な悪化

乾いた火山灰は絶縁体に近いですが、雨や空気中の湿気を含むと状況が一変します。火山灰に含まれる可溶性成分(塩化水素や二酸化硫黄など)が水に溶け出すことで、非常に強い導電性(電気を通す性質)を持つ電解質に変化するのです。

これがアンテナのエレメントや給電部に付着すると、以下のトラブルを引き起こします。

  • アンテナの共振周波数が大きくズレる。

  • VSWR(電圧定在波比)が急上昇し、送信波がアンテナから放射されず無線機側に反射して戻ってくる。

  • 結果として、無理に送信を続けると無線機のファイナル(終段電力増幅器)が発熱・焼損し、完全に故障する。

特に、波長が短くエレメントが細い430MHz帯の八木アンテナや、トラップコイルを持つ多バンドアンテナは、異物付着によるインピーダンス変化の影響を極めて敏感に受けます。

2. 火山雷と静電気による強烈な空電ノイズ(QRN)

噴火に伴う噴煙柱の中では、火山灰の粒子同士が激しく衝突・摩擦し、強大な静電気が発生します。これが放電する現象が「火山雷」です。

火山雷が発生すると、広帯域にわたって強烈なパルス状の電磁波が放射されます。HF帯(短波)で顕著な影響が出ますが、VHF/UHF帯であっても、受信時に「ガガッ」「バリバリ」といった継続的な空電ノイズ(QRN)に悩まされ、微弱な信号(S/N比の低い電波)の復調が困難になる可能性があります。

3. 火山灰の「重量」によるアンテナの倒壊

火山灰は「灰」という名前が付いていますが、実態は燃えカスではなく「細かく砕けたガラスや岩石の粉」です。そのため非常に重く、1立方メートルあたり1トンを超えることもあります。

水分を含んだ重い火山灰が、ルーフタワーに設置されたGP(グランドプレーン)アンテナや八木・宇田アンテナに大量に降り積もると、エレメントの変形や折損、最悪の場合はマストの座屈やステー(支線)の切断によるアンテナシステムの倒壊を招きます。


停電時のインフラへの影響とレピーター(中継局)のダウン

火山灰の導電性は、電力網にも牙を剥きます。高圧送電線の碍子(がいし)に付着した灰が湿気を帯びると、ショート(フラッシオーバ現象)を起こして広域停電が発生します。

これにより、自宅の固定局でAC電源を使用している場合は運用がストップします。さらに、山岳等の高所に設置されているアマチュア無線のD-STARやWiRES-X、アナログレピーター群も、バックアップ電源が尽きればダウンしてしまいます。非常時には、レピーターに依存しないシンプレックス(単信)での通信経路の確保が重要になります。

非常時の情報収集のために

富士山噴火などの広域降灰災害において、インターネットやスマホが使えなくなった時、144MHz/430MHzのアマチュア無線は間違いなく有力な通信手段となります。「空間を飛ぶ電波そのもの」は火山灰に負けません。そのために情報収集のためのツールとして、ラジオやその他広域の周波数を受信できるハンディ機などを持っておくことは災害対策として非常に効果的です。(※もちろんアマチュア無線の免許取得は更に自身でも通信ができるより良い選択です。)

しかし、実際にSOSを発信し、情報を集めるためには以下の対策と心構えが不可欠です。

  1. アマチュア無線の免許取得(いざという時に備え、アマチュア無線の免許を取得しておくことで日常的にその通信網に入っておくことができます。)
  2. 屋外の固定アンテナへの依存を減らす(ハンディ機の付属アンテナや、室内から一時的に展開できる仮設アンテナを準備しておく)。
  3. バッテリーの確保(停電に備え、モバイルバッテリーやポータブル電源、ソーラーパネル等のオフグリッド電源を用意する)。

災害時でも利用できるアマチュア無線というのは、普段から利用していてこそ、有効に活用できます。そのためには日常的な交信(QSO)が非常に重要です。いざ災害が発生した時に、普段使っていないから無線機が充電されていないとか、無線機の使い方が分からないとか、どのように話しに入っていけばよいか分からないなど、免許や無線機を持っていても「使えない」という状態になりかねません。普段から交信を行っている事で、周辺エリアに沢山の交信仲間もできていき、災害時に役立つネットワークも自然と出来上がっていきます。

このような仲間を増やしていく事も日常の防災活動の1つともいえるでしょう。

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こんにちは!オンエアーズの編集長mayasaです。 小学生の時にアマチュア無線の電話級を取得、高校1年で2アマ(当時はモールスの聞き取りがありました!)大人になってから1アマを取得しました!大学では電子工学を学び、電子回路の制作などを行っていました。 日頃からアマチュア無線の普及啓蒙活動に取り組んでいます。 子どもから大人まで多くの人にアマチュア無線の資格取得のための講習会を開催しています。 【関連資格】 第一級アマチュア無線技士 第一級陸上特殊無線技士